Lifehacking Newsletter 2016 #05

はじめに


こんにちは、Lifehacking.jp / ライフ×メモの堀(@mehori)です。

先週は出張などで飛び回り、学会に向けて研究を進め、金曜日は「帰ってきたONEDARI BOYS」イベントをこなすという具合に忙しい一週間でした。

しかも肝心のイベントでは登壇者が1人病気で倒れたため、即興で届いたスライドをプレゼンするということもしていました。時々、自分は何屋さんなのだろうかと考えますが、深く考えるとこれは抜け出せない沼ですのでやめておきます。

このイベントでは、「ブログコモンズ」という新ユニット結成の発表もありました。まだ具体的なことは決まっていませんが、今後月に一度ほどのペースでイベント(定期ライブ!)を行う予定です。

帰ってきたONEDARI BOYSイベント無事開催!私のぐぬぬを3枚のスライドで伝える

この枠組を使って、ちょっと大きめのイベントを開催することも考えていますので、決まりましたらまっさきにこちらのニュースレターで紹介したいと思います。

それでは今週の話題に参りましょう。


トピック1:Evernoteは進化しなければならない


Lifehacking.jp 記事の振り返り連載、3回目のテーマはみんな大好き「Evernote」です。

先日、インプレス社から2年前に出版した「できるポケットEvernote」が増刷されるといううれしい知らせがありました。お買い上げいただいたみなさん、本当にありがとうございました。

それを告知する記事のなかで、そういえば自分はEvernoteについてこれまでどんな記事を書いてきたのだろうかと思って調べたところ、一つの興味深いことに気づきました。

 

「入れるだけ」から「情報活用へ」


Evernoteを使い始めた当初は、どのようにそこに情報を入れるのか、どうしたら効率的にウェブから、本から、日常の考え事をキャプチャできるのかが記事のテーマの主題でした。

Google Reader から直接 Evernote に記事を送る (はてブにも!)

たとえばこちらの記事ですね。もうGoogle Readerありませんし、これは IFTT というサービスで代替できるので、記事自体を削除してもいいのですが、思い出深いのでそのままにしておこうかと思います。

これは2009年の記事ですが、ここから時がすぎて、次第に情報のキャプチャ自体が問題ではなくなってくると、「Evernoteとはなにか」ということが問題になってきます。

Evernote がもっている、Googleをも凌ぐアドバンテージ

Evernoteを単に情報整理ツールだと思っていると数年後に後悔するかもしれない理由

情報を入れるのはいいですが、それはどのように活用すればいいのか? 入れた情報以上のことができればいいのに、という発想ですね。Evernoteもそれに対して「コンテキスト」機能などで応えてくれたという流れです。

 

「情報量」の耐え難い「重さ」


やがて、Evernoteに大量の情報がたまると、それを自由に出し入れして、もっと創造的な仕事に活かしたいという欲求と、それが不十分であることに不満がでてきます。それがこのあたりの記事には見えていますね。

象は羽ばたけるか。Evernoteの未来への漠然とした不安と期待

Evernoteの未来について、クリス・オニール新CEOに聞きにいってみた

Evernoteについてはさまざまなニュースというよりも憶測がささやかれています。CEOの交代と旧社員の大量退職、関連アプリの開発停止とマーケットの閉鎖。どれもが悪いニュースのようにみえます。

でも、こう考えてみるとどうでしょうか。

元々は情報を入れるだけでよかったツールに貴重な情報がたまるにしたがって、Evernoteはメモアプリから、知的生産アプリに進化しつつあるのです。

以前は検索した情報を失わないようにしなければいけませんでした。でもいまはむしろ、いつでも検索できる情報をどのように創造的に使うのかというボトルネックが問題になり始めているのです。

 

人工知能とEvernoteの未来


CEO交代も、さまざまな関連サービスのシャットダウンも、「メモする」というフェーズから、次の進化にむけての準備ということです。

そのキーワードとなるのは、やはり人工知能です。

我々のデータはすべてEvernoteのサーバーに置かれているのですから、そのなかから関連性、情報の構造解析、さらにその先の情報をウェブから抽出する「知能ツール」になるための処理を上に構築できれば、蓄積したデータの価値を何倍にも引き上げることができます。

この移行が進むと、Evernoteからは紙のアナロジーは次第に消えていき、そこは文字を書く場所というよりも、文字も含めたあらゆるメディアを入れて、人間に都合よく情報を自動的に整理してくれる場所となるはずです。

そういう意味では、ノートブックや、タグといった機能もオーバーキルである可能性があります。

なにかドラスティックな変化を私は期待しています。それこそが、Evernoteを次の10年の必須ツールにする一手なのではないかと期待しています。

 

トピック2:フリーでオープンなインターネットへの絶望と希望


最近ちょっとブログ周辺の話題として、つながってきているものが二つあります。

一つはピース・オブ・ケイク社のオンラインコンテンツプラットフォームnoteにおける課金ビジネスの盛り上がりです。諸々の理由がありましてリンクはしませんが、その観測範囲に立っている人には多少うるさいくらいに話題が飛んできます。

もう一つの話題は、まさにそのnote上で公開されて話題になった「おばさんたちはinstagramに来ないでほしい」という記事です。こちらも、炎上案件ですからリンクしておかないほうがいいですね。本人もそこまで悪気はなかったようですし、そっとしてあげましょう。

両方とも、必ずしもポジティブに受け取れない話題ですが、私はここで誰かを批判したり、それはおかしいといいたいわけではありません。むしろこの二つの流れにみられる共通項と、ウェブに向き合う私たちの選び取りについて考えたいと思います。

 

フリーではもういられない?


まずは前者、note における課金ビジネスの盛り上がりです。この話題はプレイヤーの個性が強烈なのでまとめにくいのですが、情報の受け手として重要なポイントは一点だけで、それは「価値のある情報は有料であるべきか否か」という論点です。

この論点を是とするなら、ブログやソーシャルメディアは集客として利用され、最もその著者の「言いたいこと」は課金の壁、いわゆるペイウォールの向こうに置きましょうという話にあります。

それ自体は良いことでも悪いことでもなく、本も雑誌も映画も音楽もそういうものなのですから、「そういうコンテンツ」なのだと受け入れて購入したい人が買えばいいという単純な話になります。

しかしこの論点にはこうした反論も作れるところが興味深いのです。「ウェブというのはオープンであるべきで、情報はフリー(ビールのように、あるいはドラクロワ的な意味で)にすることがウェブの力ではないか?」という視点です。

わかりやすい例だと、ニュースサイトがトップニュースを有料、あるいはある条件下でしか表示しないとしたら、ニュースサイトというメディアとしての機能が損なわれないか? というわけです。

しかしニュースサイトも収益は必要ですから「週に4記事までは無料」「購読者のみ後半を読めるといった戦略を駆使します。

その結果として面白いことが起きます。コンテンツに対して課金することができる人の数 n 、そしてその金額 r は有限ですので、n × r が大手の「ここは外せないな」というメディアを購読すると、他のメディアの収益性が自動的に下がるのです。

これはビジネス的にも重要な話題ですが、これはメディアがどれだけ情報をオープンにしているかがウェブ全体の情報強度を決めているという視点で解釈しても面白い議論の種を含んでいるのです。

 

オープンでも、もういられない?


さて、この視点を宙に浮かせたまま「おばさんたちはinstagramに来ないでほしい」の話題をみてみましょう。

この記事は、言い方はよくなかったのかもしれませんが根っこの部分ではたいへん素直に「想定を越えたつながりはストレスに感じられる」という主張をしているに過ぎません。

> ネットと実社会のキャラが微妙に違っていて、SNSではネットのキャラになれたのにリアルな知り合いの目上の方々とそこで繋がると色々崩壊するんだよね。リア充アピールは、友達にしてるわけで、上司や親戚ににしてるわけじゃない。

友達と楽しく喫茶店で話していたら、急に親がやってきて文句をつけられたという情景に近いものだと想像するとわかりやすいでしょうか。

「でもそれだったら」とこの記事を読んだ多くのひとが声を上げました。「パブリックに投稿しているような Instagram を使ってはダメではないのか?クローズになっている LINE などにすべきでは?」

これも先ほどのペイウォールの話題と同じで、どちらかが正しくて、どちらかが間違っているというわけではなく、観測範囲の違う人々が道の中央で互いに避けきれずにぶつかってしまったという事例です。

しかしこの話題は底流ではるかに大きな論点を提起します。それは「ウェブは、どこまでオープンであるべきか?」というテーマです。

 

オープンでフリーか、クローズドでペイウォールか


ここで先ほどのnoteの話題は、まさにnote上で交わります。

直接的な課金なしに読むことができる情報が膨大にあるからこそ、Wikipediaがあり、YouTubeがあり、これまで目にすることができなかった大勢の人々のさまざまな意見があり、ソーシャルメディア上でのつながりがあり、そのすべてを第三者として享受することが可能でもあります。

誰の元に届いているか範囲を限定することなくシェアする情報があるからこそ、「電車が止まっている」というなにげないつぶやきが何百と集まってどんなサイトよりも正確なツイッター上の運行情報を受け取ることができるという側面があるのです。

情報の受け手として、私たちはウェブの情報がよりオープンで、フリーで、強固な結びつきで今後も発展することを望んでいます。しかしそのオープンさとフリーさが持続可能でない可能性もあるわけです。

これは昔からある論議で、なにもいま始まった話題ではないのですが、一週間の間に同時にこの話題が流れてくるのは、一つのシグナルとして注目しておいていいと思います。

これはオープンでフリーなウェブの限界なのでしょうか? 未知の世界への可能性を拒絶した閉じた世界での小さな幸せ。売れないけれども、だからこそウェブでしか実現しなかったコンテンツと、売ることを前提に設計された予測可能なコンテンツとの相剋。

私たちの現在の情報の選び取りが、実は次の世代に残す情報世界の構造を決めていると思うと、これは見つめ続けるに値する話題なのです。

 

新コーナー、AMA "Ask Me Anything" へのお誘い

このニュースレターをお読みになったみなさんは「なんだかブログと違うな」と思われたかもしれません。

ブログが、初めて来られた方むけに言葉を作っているのに対して、このニュースレターでは、もう少し距離感の近い、何度もブログを呼んでくださっている人向けの書き方をしています。

以前はブログにコメントもちゃんと組み込んでいたのですが、スパムが多いこともあって最近は機能自体を切っていたりします。しかし読者のみなさまとの双方向性こそがブログの良さでもあるので、まったく無くしてしまうのは惜しい気もします。

というわけで、今週からこの AMA “Ask Me Anything” のコーナーを開きたいと思います。

ふだん、私自身は自分のやっていることなどについてあまり書いたりしませんので、「本当に研究者なのですか?」と聞かれることもよくあります。

そういった質問でもよいですし、なにか他のことでもかまいません。それこそ Anything です。冗談のようなものでも、リクエストでもけっこうです。

ただし、解答が多かった場合には、ピックアップしてニュースレターで紹介することになりますので、すべてにタイムリーにお答えできないかもしれません。

ニュースレターで採用できなかったものについては、noteなど、別のプラットフォームで編集してお答えできればと思います。

質問投稿フォーム:

こちらのフォームをまずは週末のあいだ開いておきますので、よろしければなにか書き込んでください!


 

まとめ

今週はこちらで終わりです。また調子に乗っていたら多少冗長に、5000字を越えてしまいました。いいのかこれで。本当にこれでいいのか。

何事も試行錯誤で、それでもあまりとらわれずに書き進めたいと思います。筆を進めた先に見たい未来がいろいろとありますので、そういったものもシェアできる時期がきたらみなさんにお知らせしたいと思います。


また来週まで、Happy Lifehacking!


今週のLifehacking.jp


今週のライフ×メモ

今週のライフハックLiveshow

ライフハックLiveshow #170「IoT」
今週は用事があってお休みしていましたので、上の回は前回と同じです。今週はまた再開しますので、日曜日夜10字、よければ tune in してみてください!

ライフハックLiveshow
Copyright © 2016 Lifehacking.jp, All rights reserved.


メールの送信先をかえたり、購読を解除する場合はこちらから。
メールアドレスの更新、登録の解除
You can update your preferences or unsubscribe from this list

Email Marketing Powered by Mailchimp